【家業ラボ】「先輩家業後継者への相談の場 経営相談会」でお話させて頂きました。

2021/4/21 https://kagyoinnovationlabo.com/2723/
今年度より開始した、悩める後継者を対象とした経営相談会。第1回は株式会社みやじ豚の宮治勇輔氏と株式会社第一フォームの澁谷正明氏をメンターにお招きし、3名の後継者からの相談を受けました。経営相談会は後継者が認識している課題が、「本当に最優先で取り組むべき課題なのか」「他に重要な課題を見逃していないのか」といったそもそも論についてや「現在検討している解決策が有効なものか、他に選択肢はないのか」などをメンターや参加者を含めオープンな場で議論する機会です。

今回の相談の内容は大きくは3つ、
〇後継者が代表になるために必要なこと
〇EC強化のためのWEBページ等の活用戦略
〇アイデアを行動に移すために経営者に必要なこと
について参加者から相談を受けました。


1人目:後継者が代表になるために必要なこと


事業承継の2つのゴールに向けて、後継者からアクションを起こす

最初の相談は、事業承継のタイミングや継ぐにあたって必要なことは何かという内容でした。
事業承継には大きく2つのゴールがあり、1つは「社長のイスを獲得すること」、もう1つは「オーナーになること(株を自分のものにする)」です。
比較的大きな規模の家業では、後継者が子供の頃から次世代の育成に取り組み、承継前には大抵の準備が済んでいるというケースもありますが、ほとんどの家業はそうでないケースが多いと思います。そうでない場合にまず後継者がすべきことは「現経営者は何歳で引退を考えているのか?」の確認や自身が「いつまでに会社を継ぎたいと思っているか」などの話をする対話の機会を自分から作りに行くという意見が出ました。

突然の承継の場合を除き、後継者側がしっかりと今の技術を承継しているという点は前提としてありつつも、今まで家業が積み重ねてきた歴史や技術を尊重しながら「私の代はこういうスタイルで行く」ということがはっきりと言えるのであれば、承継のタイミングを明確に定めることで解決できるのではと澁谷氏からのアドバイスがありました。これは、入社のタイミングから承継の時期を決めており、次の決算が終わって承継を行うことを条件にして入社をした同氏の経験から得た考えでもあり、後継者自身も自身のキャリアの先行きを明確にすることができれば、そこに向けたモチベーションも確保できるというお話をいただきました。また、他参加者からは承継の期限を決めた経緯として、自社製品のロイヤルユーザーの高齢化に備え、早めの承継により新しい手を打つために先代に直談判をしたなどの経験談もありました。

承継の時期を明確にすることは、後継者と現経営者にとって目途となる指標ができるだけでなく、取引先や金融機関などの関係者にとっても、安心感を与えることにつながります。ですので、自身のやる気を伝えることはもちろん、自分からきっかけを作っていく、あるいは新規事業の開始など、社内の出来事で承継の必然性を感じるきっかけを見つけていくことが、重要ではないかという結論に至りました。


2人目:EC強化のためのWEBページ等の活用戦略


低単価商品の個人向け販売を強化するために、そもそもECは適切か?

  相談の冒頭は、個人顧客に向けたECサイト強化のための業者選定のコツや戦略面の相談から入ったこの議論ですが、対話の中で「そもそもECサイトを使うのが適切なのか?」というそもそも論の話が出てきました。対象顧客へのヒアリングから、Amazonなどのサイトであれば購入しやすいといった提案があった一方で、送料などの条件面を考慮して購入してくれる人はどれくらいいるのかといった詰めの部分は議論が必要であると参加者自身も感じており、メンターからの問いでその観点の議論が活発化しました。

その中で、ECを活用した販売戦略をとるのであれば、〇〇セットなどといったように「セット商品にして単価を高め、送料の負担を減らす」「プチギフトなど人に贈る用途を想定したパック化」といった案や「健康に良い他社と協働して、物流コストをカットする」などの具体的な案が他参加者からも挙げられました。その結果、まずはECサイトでの販売の可能性を検証してみるという意味合いでも、ECでの販売に挑戦してみるという方向で議論は収束しました。


3人目:アイデアを行動に移すために経営者に必要なこと


徹底して数字と向き合う、そして他人を頼る意識を持つ
アイデアを深めていくために、自分でまずは考えるということはもちろん最優先ですが、どうしても1人では意見が煮詰まるタイミングはあります。そんな時に重要なのは、自社の数字としっかりと向き合うこと、他の人に聞くこと、という2つのシンプルな意見がメンターから出ました。

自身が何をするべきかは会社の現状が教えてくれる。要するに、考えるまでもなく数字を見ると緊急で着手しなければいけない領域が見えてくるというのが本質であり、数字を見るというのは、「このままでいけば〇年後までに会社が倒産する」といったところまで具体的に想定し、月々に必要な金額を得るために必要かつ取り組みやすいことから着手することだという意見がありました。そしてその意思決定のカンを磨くには、どれだけ多くの致命傷にならない失敗をできるかだともメンターの宮治氏は話しています。膨大な行動と失敗に裏打ちされたカンがあるからこそ、正解を引き当てることができるという話には、参加者も納得している様子でした。

また、2点目の他の人に話を聞くことという点に関しては、最後に両メンターから外部人材活用の話もありました。外部から入る人材との対話により、自身のやるべきことが可視化され、外の目線からの意見により議論も活発になっていくと、4月から副業人材を採用した澁谷氏は話していました。考えを深めるというだけでなく、自身の活動速度が3倍になったような感覚で物事を進めることができていると、昨年より学生インターン生を採用した宮治氏も話しており、事業の推進剤としての期待についても触れていました。

90分という短い時間での相談の場ですが、参加者からは「承継のタイミングやきっかけが重要と分か、それをどこに持っていくかを検討しようと思う機会になった」という声や「自分1人で考えすぎず、他の人の話や数字を見て決断する意識を持とうと感じた」「先輩後継者のうまくいっている事例を聞けたのが収穫で、今後の取り組み方針が決まった」といった感想があり、非常に有意義な時間となったのではないかと感じています。

家業イノベーション・ラボは、孤軍奮闘する家業後継者の方が身近に相談できる場でもあります。一人で悩むことなく、悩みを共有し、皆で考える時間として次回以降も経営相談会を活用いただけますと幸いです。

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